環境触媒化学特論I(第2回/2022年4月21日)感想/質問/回答《26人出席・36人メール送信》
「光触媒がわかれば化学がわかる・化学がわかれば光触媒がわかる」と大胆なテーマでやる環境触媒化学特論I(おそらく環境物質科学専攻開講講義のうちで「化学」がはいっている2つのうちの1つ(もうひとつは「環境触媒化学特論II」))の最終年度の講義を受講していただきありがとうございました.光触媒だけではなく,化学の根幹である熱力学と速度論(動力学)のエッセンスをすこしでも伝えられたかなと思っています.おおくの受講生にとって「キラーカード」ということばが印象にのこったようです.「研究とはじぶんの主張に対するキラーカードをつぶすこと」というのはある意味で真理です.なお,「キラーカード」というのはわたしの造語で,論理学では「反証(contrary (counter) evidance)」であることをおわすれなく.では,みなさんがいい修士論文を完成されることを祈っています.
《一目で》 When the semiconductor oxide is irradiated by photons, the electrons jump from the valence band to the conduction band, and electron-hole pairs are generated. The electrons are reducible, and the holes are oxidative. High OH free radicals, thereby degrading organic matter into inorganic compounds such as water and carbon dioxide. This is the principle of photocatalysis.In addition, the color that our eyes see is the light that is reflected because the object does not absorb it.(【Code is "pc20220421".】I did not mention about hydroxyl radical. Why do you think hydroxyl radical degrade organic compounds?) ▼Are there any substances that absorb all light or completely reflect all light? ▲I don't know.
《けろっぴ》 光触媒の反応が電子のエネルギー差によっておこるシステムは少し難しかったです.(エネルギー差によって起こる...というか,それを「のりこえる」エネルギーをもつ光によっておこります) ▼光触媒を専門に研究されている方は皆,原理の違う通常の触媒についても精通しているものなのでしょうか. ▲20年ほど前までは,光化学,電気化学,触媒化学や表面化学を専門とする人あるいは研究室によって研究がすすめられてきました.その意味で,それぞれの分野の考えを反映したものだったといえるかもしれませんが,さいきんは「光触媒化学」の研究室がふえており,ある意味できちんとした基礎がないまま研究が行われてきたように思います.
《ねこ》 私たちが見ているものの色は,全ての色の波長をもつ太陽光のうち,そのものが吸収しなかった波長の光を反射したり透過したりすることによって私たちの目まで届き,脳に認識されることで感じでいることを理解しました.また,人によって色の見え方の感度が違うのは面白いと思いました.画家のゴッホは赤,青,緑のほかに紫外光線を色覚できる4色型色覚と言われていますが,そのような人たちがみえている世界はどんな世界なのだろうと思いました.また,人間以外の動物や昆虫なども色覚が違うらしいので,彼らがどんなふうに世界を見ているのか気になりました.(動物の感覚というのはまだわかっていないところが多いようです.わたしが見ているものは,そのまま見えているように誤解していますが,実際には脳内で再構成されたものです)
《唐澤貴洋》 From today’s lesson I know the working mechanism of photocatalysts(Usually TiO2): certain wavelength light is absorbed by photocatalysts and electrons are excited from valence band to conduction band, leading to negatively charged electrons and positively charged holes with high energy. After contacting reactants, they provide their energy to support reduction and oxidation reaction and recombine at last. Photocatalysts is different from other catalysts because the photoreaction depends on photoabsorption and excitation of electrons in the photocatalysts. We can produce all other colors with mixture of red, blue and green.(That's right, but those are a kind of knowledge.)
《コリ栗の島8.0》 I have a new understanding of the difference between photocatalysis and catalysis, I used to think that photocatalysis and catalysis just happen under different conditions, but photocatalysis is essentially a photoexcited reaction. The basic principle is under photoexcitation, electrons jump from valence band to conduction band, so that they form photoelectrons in conduction band, and form holes in valence band. But photoelectrons and holes will recombine, people began to prevent the recombination, and tried to use electron transfer to other substances alone, or the hole to obtain electrons from other substances, so as to carry out a series of studies through electron transfer and REDOX reaction.(Not "photoexcited reaction", but reaction through exicited states.)
《K》 光触媒反応は電子の励起を利用するということは以前勉強したことがあって,大まかな概要については理解しているつもりでしたが,改めて今日の講義を聞いたところ,まだよく分かっていなかった部分が多くあることに気づかされました.特に励起された後の電子の挙動や酸化還元反応を起こすという点については理解があやふやだったように思います.(厳密にいえば,ほとんどわかってないといってもよいと思います)
《瓜》 価電子帯から伝導帯に光エネルギーを使用して電子が遷移する際,位置は変化すると解釈していた.しかし,バンドは縮退した軌道が連続的に重なっているものであることを考慮すると位置は変化せずエネルギーのみ変化するという解釈が正しいことを学んだ.また,空間的に重なりがなければ電子励起状態をつくれない.つまり,例に出ていたホルムアルデヒドの場合,酸素が有するn軌道(面内)とπ軌道(面外)におけるn-π遷移は生じず,π-π*遷移によって電子励起状態が作られると学んだ.(「縮退」じゃないんです,バンドは.また,n-n遷移じゃなくて,n-π*遷移です)
《かなこ》 光の特徴についてはよくわかったのですが,励起については難しいと感じる箇所がいくつかありました.前に所属していた研究室で異なる植物のクロロフィルの吸光度測定を研究に使用している人がいたので,今回の授業は興味をもって受講することができました.分子構造が異なるだけで特定の吸収スペクトルを持つのは改めて面白いなと思いました.(励起というのはわかったようでわからない概念です.というのは,電子のエネルギーが量子化されているということが前提だからです)
《Alarm Clock》 In today's class we learned first and foremost some actual photocatalytic chemical reactions. The second is to learn the photocatalytic mechanism of semiconductor (TiO2). Finally, the distinction between the types of electromagnetic waves and the wavelength frequency of visible light and ultraviolet light is introduced, as well as the question of why chlorophyll absorbs the least green light.(That's right, but all these are "knowledge", not "what you learnt".)
《りん》 太陽光が白いという前提条件を忘れていました.気をつけたいです.(前提条件はだいじです.研究上の失敗はそれをわすれることによっても起こります(それだけじゃないけど)が,その失敗こそがあたらしい何かをうみだします) ▼ところで,絵の具を全て混ぜると黒いのに光を全て混ぜると白なのは何故ですか. ▲光の三原色は光の色そのものですが,絵の具の三原色は光吸収によってきまります(絵の具の色は吸収されなかった色の光)からちょうど「ネガポジ」の関係になります.
《Sean》 Today I learned some basic knowledge about photocatalysis, the difference from catalysis and also reviewed some contents in molecular orbital theory.(The interpretation on the molecular orbital theory is JUST example.) ▼My question is since the principle of photocatalysis is about excitation from valence band to conduction band, does it mean smaller band gap is always better or it depends on the target reaction. ▲I will interpret that point later, but important point is both large and small bandgap materials have merits and demerits.
《Kenny》 From this lesson, I know that photocatalysis reacts through exicited states. I feel interesting that the object itself has no color. It is the object that reflects light. The reflected light enters our visual cells and our brain forms color. So the color of the world we see is people's subjective consciousness, not the real color of the world.(That's right! Therefore, what you see might be different what the others see.)
《Wyatt》 So today we learned principle of photocatalytic reaction, The principle of photocatalytic reaction is redox reaction. When the semiconductor photocatalytic material is irradiated by light, it will absorb light energy.the material will be excited, resulting in electrons and holes.(If that excitation is electronic, not vibrational or rotational, and the material has a band strucure.)
《そーめん》 光触媒反応の基礎となる電子の励起について大まかなイメージはつかむことができた.(だいたいね) ▼今まで研究をやってきた中で一番思い入れのある光の波長は何ですか. ▲思い入れはありません.おそらく実験でつかったうちでもっとも多く励起につかわれたのが365 nmの紫外光で,これは高圧水銀灯のもっとも高強度の波長です.
《コッペパン》 今日の講義では,電子とエネルギーのバンドギャップの話で,電子が励起する時は垂直方向に動くということを初めて知った.また,葉っぱがどうして緑色なのかを考えたことがなかったので,学べてよかった.(えーーーーー.葉っぱが緑に見える理由をしらなかったんですか..) ▼色素を作る企業ではこの原理を使って色を作ってるのですか. ▲原理というか....吸収波長をコントロールして色をつくってます.
《Aditya》 Thank you for the lecture about the interaction between substance and light. I already know about the content of the lecture, but with attend and hear the lecture I got refreshed again about the knowledge. Even though I got new perspective of the knowledge, like the explanation of the photoexcitation and recombination in photocatalysis process explained in Japanese language, that is new to me.(If you find any difficulty for explanation in Japnanese, please let me know with "Chat" in Zoom.)
《だるま》 光触媒という言葉の中に,「触媒」という言葉が入っているが,反応を促進させるという触媒とおんなじ仲間ではなく,光触媒は光触媒として独立しているということを知り納得した.日本語はややこしいと思った.(ややこしいというか...「光触媒」というのは明治時代からありました) ▼electron beamというのは,何に使われているのか. ▲電子線ですか,研究の場合には,たとえば電子顕微鏡が代表例です.
《chocolat》 伝導帯と価電子帯の説明は以前も聞いたことがあり自分では理解していたつもりでしたが,位置の移動を伴っているイメージがどうしてもあったため,今回の講義を通して励起自体は完全にエネルギーのみの変化であることを再認識し,量子化されたエネルギー準位上を移動するというイメージをより明確にすることができました.(イメージ図だとどうしてもエネルギー軸での変化が移動をともなっているように思えるのは当然ですが...やはりそこがポイントです) ▼触媒と光触媒が全く異なったものだということは,光触媒には触媒という文字が含まれているものの,これは光を受け取ったTiO2などの物質が反応前後で別の物質に変化していないことが触媒と似ているために触媒という言葉が使われてしまった,といったことでしょうか. ▲現状として「光触媒」ということばがありますので,解釈としては「反応前後で変化しない」ということでいいのですが,おそらく最初に命名されたときは「触媒」に光があたったときの反応というとらえ方だったかもしれません.ことばとしての「光触媒」はすでに明治時代からありました.
《ねおいちごみるくぼーい》 光触媒は触媒の一種であると思っていましたが,触媒と光触媒は全く違うものであると分かりました.また,光が粒子であり,波であるという非常に複雑な概念に興味を抱きました.また,見えている光の波長は同じなのに人によって見え方が様々なことにも非常に驚きました.(「見えているもの」つまり視角としての認識は脳内でつくられていますので,ほかのひとがどのように「見えている」かを知ることはできません)
《Sihao》 Thank you for your class. I got to know the working mechanism of photocatalysts, and related reactions, which gave me a more specific understanding of the field of photocatalysis. I also learned how photocatalysis is used in industry. The most interesting thing is that I have a deeper understanding of light, the detailed classification of light, why we see the color of objects, which I have never considered.(Probably, those knowledge might be learnt in undergradaduate course.)
《二人っ子政策》 光触媒については,多少知識があったので今日の講義を理解することができたと思う.なんとなく知っていたことの理解を深めることができてよかった.(で,いまは「なんとなく」じゃないと..)
《薄緑》 酸化チタンの物性を知り,なぜ,光触媒に用いられているかを学ぶことができた.また,酸化のメカニズムについても学んだ.(そんなこと話しましたっけ..) ▼光触媒は一般的な触媒と同じようには説明つかないとおっしゃられていましたが,もし光触媒を別の呼び方で呼ぶとしたらどのような呼び名が適切でしょうか. ▲べつに名前をかえたいとは思いません.かえたからといって何かかわるわけではありませんから.
《Xishan》 スーパーオキシドアニオンラジカルの話で,光触媒を専門で研究している人でもさまざまな見解があるということを知り,光触媒反応の反応機構は複雑で難しいと感じた.(見解をもつためには,その基本となる実験事実とそれから結論にいたる論理を検証する必要がありますが,スーパーオキシドアニオンラジカルについては,それによって有機物の酸化分解反応が促進されていることをしめす実験事実はしめされていないようです)
《Red》 Exploring photocatalytic reactions from microscopic perspectives feels like entering a different world. It is difficult but interesting.(If so, what is your world?)
《NT-D》 電場の振動と磁場の進行が互いに直行[ママ]していること(それってなに直交しているのですか)
《ラムネ君》 光触媒のほとんどが酸化チタンであるにもかかわらずその活性についてはまだわかっていないということが非常に不思議でした.光触媒の持つ性質は有機物を吸着し無機物まで分解する酸化還元反応と,超親水性の2つが大きいと感じましたが,この2つの性質だけでこれだけ様々な所に使えるのだと思うと物質や化学の持つ奥深さを改めて考えさせられました.また,触媒と光触媒について大谷先生のいうよくある勘違いをしてたので,全然違うものだと聞いて驚きました.(はい,世の中「かんちがい」だらけです) ▼(1)酸化チタン以外の光触媒には何があるのでしょうか.(2)また,酸化チタンに比べた長所などないのでしょうか.(3)前回のメールで日付を間違えていました.その場合,修正して送信し直した方が良いでしょうか. ▲(1)実用化されているものはほとんど酸化チタンです.実用化されていないものについてはさまざまなものがあります,ここに例をあがられないくらい.(2)長所はありますが,酸化チタンのもつ長所をうわまわるものはないようです.(3)講義のウェブページでじぶんのニックネームのコメントが「フォローアップ」に掲載されていなければ,再送してください.
《mochi》 光触媒が光からエネルギーを受け取る仕組みを,特定波長の光を吸収することで起こる電子励起によって生じるものであると理解した.(【学生番号がただしくありません(ずっと)】その特定の波長はどうやってきまるのでしょうか)
《Sさん》 光触媒と触媒はほぼ同じものだと思っていたので,全く違うものだということを知りました.また,電子の励起について今回の講義を受けて,以前よりはよく理解できました.(さよかーーー(「そうですか」の大阪弁))
《ヌメロン》 電子が波であり,粒子であることは電子の動きを考える上で重要なことだと考えられた.(「うごき」...ですか)
《札幌少年》 Today's topic is the nature of light and the principles of photocatalysts. Light is both a wave and a particle, but it has no weight and its speed is independent of its frequency. Photocatalysts are characterized by superhydrophilicity and the ability to transform organic matter into inorganic matter. Eighty percent of the photocatalysts are titanium dioxide. Photocatalyst is not completely the same as the traditional catalyst. Its main function is to generate active photogenerating electrons when absorbing light and guide the oxidation reaction. The specific principle is as follows: the photons absorbed by the semiconductor with energy greater than or equal to the band gap Eg are excited to generate photoelectron-hole pairs, and the electrons transition from the top of valence band to the bottom of conduction band; Photocarriers migrate to the surface under the action of electric field or by diffusion. Photogenic carriers recombine and release the absorbed energy in the form of heat or light energy. The electrons and holes migrated to the surface of the catalyst reacted with the adsorbed material on the surface of the catalyst, respectively.(This is correct, but this is a summary and not what you learn, different from what you hear.)
《なすび》 光触媒が様々な製品に利用されている一方で,光の吸収や励起といった原理を理解するのは難しいと感じました.(実用化されているからといって,理解しやすいものとはかぎりません)
《シン/すだちおろし》 光触媒と一般的に触媒と呼称しているモノとは大きく異なるというのは興味深い点であった.(せやろ) ▼大谷先生の言う,知ると学ぶの違いは何なのでしょうか.知ることも学びの一つではないですか. ▲学ぶは,知ったことについてぞの基本となることを理解し,じぶんでその基本となるものをつかうことができるとともに,そのことをひとに伝えることができるということです.ひょっとしてわたしが説明している内容だけを知っていると思っているんですか.
《お野菜》 葉がなぜ緑色なのか知れて驚きました.(【講義コードは「pc20220421」です】そんなことをしらない理系の大学院生がいることが知れておどろきました) ▼なぜ物質によって特定の色を吸収するのでしょうか. ▲物質によって構造がちがうからです...それ以外には理由はありません.
《流し満貫》 光と色の関係について学ぶ事ができましたが,電子励起についてはまだ微妙に理解できていないです.(微妙ねぇ...いずれにしても,講義だけで理解できるなんて考えない方がいいですよ) ▼先生の好きな色はなんですか. ▲無色ですかね.
《み》 光の波長や特性について学んだ(さよかーーー)

《山崎まさよし》 光触媒を学ぶ上で光は切っても切り離せないものだと思うので基本的なことを勉強できてよかった.(そんなんあたりまえやんか)