環境触媒化学特論I(第14回/2022年7月21日)感想/質問/回答《18人出席・36人メール送信》
「光触媒がわかれば化学がわかる・化学がわかれば光触媒がわかる」と大胆なテーマでやる環境触媒化学特論I(おそらく環境物質科学専攻開講講義のうちで「化学」がはいっている2つのうちの1つ(もうひとつは「環境触媒化学特論II」))の最終年度の講義を受講していただきありがとうございました.光触媒だけではなく,化学の根幹である熱力学と速度論(動力学)のエッセンスをすこしでも伝えられたかなと思っています.おおくの受講生にとって「キラーカード」ということばが印象にのこったようです.「研究とはじぶんの主張に対するキラーカードをつぶすこと」というのはある意味で真理です.なお,「キラーカード」というのはわたしの造語で,論理学では「反証(contrary (counter) evidance)」であることをおわすれなく.では,みなさんがいい修士論文を完成されることを祈っています.
《けろっぴ》 総復習ということで,過去の内容を振り返りこんなことも学んだなと思いながら授業を受けてました.また先生とジョブズはたんぱく質でいう二次構造三次構造は同じでしたが,アミノ酸配列の段階で違うと思うので別人だと思います.(そんなこと考えなくても別人だよ)
《K》 私は有機合成を専門としていて,目的物とは全く違うものを単離してしまったことはよくあるので,無機ではきちんと同定していないということがとても恐ろしく感じました.バルクは同じでも表面が違っていたり,サイズの違いで表面構造に違いがでたりするならば,同じ化合物としていても違った結果が出てしまうこともあるはずなので,データの再現性が取れなくなるのではと疑問に思いました.(そのとおり.無機固体材料の再現性はきわめてわるいので,うまくできなかったら「おまえは腕がわるい」といわれます)
《いかおどり》 surface,bulk,macro,microで使うべき装置があるということを今まで知らなかった.(あんな分類方法はこれまでつかわれてこなかったと思います.RDB-PAS(逆二重励起光音響分光法)がほかの分析方法とちがうことをしめすために「わざわざ」あんな分類をつくったのです) ▼私はFTOガラスにニッケルや鉄を電解析出させる実験を行っています.本当にニッケルや鉄が析出していると根拠を示すためにはどのような実験や観察を行えばいいでしょうか. ▲元素としてのニッケルや鉄が析出しているかは,X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy=XPS)でわかりますし,うまく分析すれば,金属の価数も判定可能です.
《ありがたいおことば》 自分の研究テーマに近くて勉強になりました!(さよか...でも「ちかい」ところのはなしは一時的に役にたっても,イノベーションにはつながりません.ちがう分野の内容の方が重要ですよ)
《New bee》 Thank you very much for lecture today, today I learned a lots of analytic methods for macro or micro structure, especially for surface macorscopic analysis. Steve Jobs said, "Innovation distinguishes between a leader and a follower.“ It encourage me keep looking for progress.(Steve also said that imagination is just to find the relation among known things (translation from "想像力とはむずびつきを見つけることにすぎない"). This leads to ORIGINALITY.)
《勇敢牛牛》 Review the old and learn the new. By reviewing what you have learned in the past, you can still find new points worth learning. Although there are many methods of analysis, we usually only use a few of them. After all, the equipment is too expensive.(That's true. However, in old times researchers built by themselves new instruments for analysis, which were then commercialized. We should analyze what we want to analyze, but not we can analyze.) ▼What do you think is the most fascinating trait of Steve Jobs? ▲Trait? I don't know him exactly.
《かなこ》 外部からのバイアスによる本田藤島反応[ママ]と同様に,電位勾配が無いと光触媒反応が起こらないことがわかった.(「本多・藤嶋効果」です.いえいえ光触媒反応が起こらないなっていってません.酸化チタン(ルチル)単結晶をつかう電気化学反応系ではバイアスをかけて,酸化チタン内部に電位勾配をつけないと進行しないといっただけです) ▼special report のヒントが欲しいです.答えは一つですか. ▲「まちがい」や山ほどありますよ.
《飲んべんだらり》 有機合成は必ず同定をしなければならず,元素分析の誤差を0.3%までに抑えなければならない.無機ではbulk,surtaceの構造を決めなければならず同定が困難.(そのとおりだけど...で,「飲んべんだらり」はどっちなんですか)
《ぶぁーふぁ》 大福の例えがわかりやすかった.今まで,含まれている少ない要素だけで物質を決めつけてたのだと思った.光触媒の同定が少ないことは知らなかったけど,RDB-PASにより表面種を決めることができるのでより光触媒の進歩が出来そうと思った.(あぁ,まんじゅうね.ちなみに,RDB-PASによりえられるTD(total density=電子トラップ総密度)は比表面積にかわる尺度になりえますが,比表面積そのものではありません)
《Alarm Clock》 Thanks for today's lecture, although it is not very close to my research direction, but I still learned a lot of knowledge. For example, methods of analysis of macro or micro structures.(Do you think you will not change your field in the future?)
《mochi》 NMRやIRでの測定を行った際,本当に同定できているのか.と疑問に思ったが,指紋が一致しているものという例えを聞き,複数の測定からより確実なものにすればほとんど同定できていると言えると考えた.(そう,有機化学の分野でも「ほとんど」同定できているというだけです)
《ヌメロン》 Band-structure model を考えるにあたって,表面やバルクを考慮しないこと,多電子移動の反応についてはわからないことがわかった.(で,どうしましょうか.たいていの固体材料は「そんな感じ」ですよ)
《唐澤 貴洋》 This week I learned the basic band-structure of photocatalysts and some indexes to identify its characteristics such as ET, DOS, MET, SEP and others. Also, different technical instruments are used to character different sizes and surfaces of photocatalysts.(A littel bit different, but almost right.)
《亮平》 有機化合物の合成は合成経路を見つけることだけでなく,化合物の同定も難関なのかもしれない.(【講義コードは「20220721」です】構造が複雑であればあるほど同定は簡単ではなく,現代でも「同定ミス」は多数報告されています)
《NT-D》 構造を決める際,入ってる原子で区別したりするので,今日の話はよく聞き馴染みのある内容がありました.(「はいってる原子」ってなんのことですか)
《黒猫ヤマト》 有機化合物の同定について,名前を付けられたら同定が出来たことになる,という考え方は分かりやすくて勉強になりました.先生とスティーブジョブズの話を聞いて,全然違う二人なのに文字の羅列だけ見ると同じに見えてしまいました.一方で指紋だけで二人は判別可能である,ということからも指紋の凄さをひしひし感じました.(「同定できたことになる」だけです,科学に絶対はありませんから.また,指紋により同定できるというのは,やはり「まだ例外がみつかっていない」だけです)
《マクフライ》 天然有機化学の分野はパリトキシンのような複雑な物質を同定する過程を楽しむことができる.またそれと同時に生命が進化の過程でこのような複雑な物質を作ることができるようになったという事実から生命の神秘のようなものを感じることができる.だからおもしろい.(そうかなぁ...自然がどうしてパリトキシンのようなもの,つまり高い毒性の化合物を合目的的につくったことの方が神秘だとおもいますよ)
《Sean》 In today's lecture, professor talked about the identification of chemical substances and introduced some analysis methods that I didn't know before.(even though purity was mentioned but I would like to ascribe it to identification, because identification also has the job of testing purity) Actually, when I heard surface macroscopic analysis, I thought it was observations from human eyes, but clearly I misunderstood the meaning.(Ther terms of icroscopic and macroscopic are very important for analysis of measuement results.) ▼My question is, even though I saw the contents about bulk and surface, I still don't really understand why they are different, isn't surface a cross-section of the structure? Why is it different from bulk? ▲Surfaces have no neiboring atoms (ions) in one side. This is completely different from the bulk.
《Kenny》 Today’s class is funny. It is interesting that every chemical substance also has its own "ID card" like human.(Yes, for semiconducting materials such as metal oxides, there must be ID cards for them.)
《おにぎり》 パリトキシンがあまりにも長鎖で驚きました.無機個体材料の同定と再現性を取るのがそんなに大変だとは知りませんでした.(糖のようなくりかえし構造をもたない有機化合物のうちで最大のものとかんがえられています.無機固体材料の研究者はみな「あきらめて」いるともいえます)
《Ma》 触媒を手順通りに合成した時,同じ活性が得られない経験をしたことがあったので,同定されて(して)いないことは問題であるということに納得しました.新たな無機化合物の同定手法を開発をしたことに驚きました.(はい,そのとおり.開発したんです,だれもかんがえさえしなかったことを)
《14人っ子政策》 XRDなどで何となく同定しているつもりだった.(せやろ...ぜんぜん同定できてまへんでぇ)
《コリ栗の島8.0》 Thanks a lot for today‘s class and learned a lot. Today's class mentioned that ERDT and CBB are like fingerprints, so I was thinking that CAS NO. is something like a human's ID number.(I don't know how CAS number is determined.) ▼Is this also unique? Is there a situation where two substances have the same CAS NO.? ▲However, it is impossible to put number considering the difference of structures such as amorphous phase and surfaces.
《Red》 It is really interesting to use fingerprints to describe ERDT and CBB of inorganic compounds, and I immediately understood their role and importance.(That's right. If you want to measure your samples, please let me know.)
《Sさん》 饅頭やスティーブジョブズと先生の例,非常に分かりやすかったです.(せやろ)
《わさび》 バンド構造モデルはバルクの構造のみによる理解で,多電子移動・表面状態・分布の密度などを反映していないということを知り,直感的に理解しやすい概念であっても,その方法で考慮できる要素とできない要素を区別することが大事で,簡単に鵜呑みにしてはいけないと感じました.(そのとおり! ...なんだけど,そんな「わかりやすい」ものに疑いをかけるのは簡単ではありません)
《ごぐま》 無機化合物では,同じものを作ったとしても,表面が同じでなかったりして,同じ瓶から取ったものでもちがったりしてくるということは,実験結果に再現性が取れなくてもなんでかわからないので悩んでしまうと思いました.(【講義コードは「pc20220721」です】はい,みんな悩んでます,いや,もうそれを通りすぎて「あきらめて」ます)
《の》 化合物の名前を決めることが出来れば同定ができるというのはとても理解しやすかった.人間の同定は指紋だけあればできるというのも面白かった.(いや,だけど無機化合物は構造を反映した名前をつけられないから,なまえをつけることで「同定」はできないってところがだいじなことです)
《そーめん》 自分は有機合成の研究をしているので,無機は同定をしないというのに驚いた.(「なんで,固体材料科学の研究者は同定しなくていいのか」って怒ってもいいよ.でも,「IUPACが同定できなっていってるんだもん」と返答されます)
《Aditya》 Honestly, this is the third time I have been lectured about the electron density trap for metal oxide by you, sensei. But still, in every lectures, I learn and heard something new.(Only three times?)
《み》 駆け足ではありましたが,光触媒についてのみでなく物質の同定について学ぶことができ,知らないようそがおおくあることにおどろきました.(たぶん「み」さんがしらないことは数えきれないくらいあるとおもいますよ) ▼大谷先生はつぶあん派,こしあん派のどちらですか. ▲「つぶあんでもこしあんでもどっちでもいい」派です.京都の平安神宮のちかくにある「平安殿」という和菓子屋さんの「平安殿」というまんじゅうが大好きですが,これは品のいいつぶあんです.おなじく京都の鼓月がだしている「冷しかつら川鮎」は鮎のかたちの焼き皮に....あれ「あん」じゃなかった,「わらび餅」がはいっていて,これまた大好物です.だから,「つぶあんでもこしあんでもわらび餅でも」派です.
《札幌少年》 Identification methods of chemical substances are of great help to many researches, and I have also spent a lot of time on the study of identification of compounds. However, there are still many difficulties in the identification of mixtures(That's right. Therefore, we chemists can continue working in this field.)
《Sihao》 Thanks for your wonderful course. I learned a lot of methods and principles of microscopic and macroscopic material identification. I think analytical identification is very important and indispensable for any chemical field, just like every company needs accounting. Therefore, it is very important to learn material analysis and identification. Thanks for your teaching.(Without specification, it is impossible to discuss materials.) ▼Why are there high temperatures all over the world this year? ▲Beer sales went down because of COVID-19, so the beer industry sought out a shaman and made this summer hot. Then, you can surely say this FAKE, but can you say the other explanations such as the green-house effect by carbon dioxide to be NOT FAKE?

《瓜》 有機化学でお馴染みのIUPACによって,無機化合物は構造を反映した命名をすることが困難であるといわれているために無機化学分野では同定が免除されている点に驚いた.1つのサンプル瓶中であっても比表面積などのパラメータが若干異なる状態で混在しているという知識がなければ,同じサンプル瓶から採取したというだけで同一条件とみなしてしまうので,異なる傾向が取れたと思えてしまう点が固体材料の難しいところだなと思いました.(はい,そのとおり...だけど,ほとんどのひとがそのことを自覚していません)
《流し満貫》 無機では同定しないということに驚きが隠せないです.(【講義コードは「pc20220721」です】べつに隠さなくていいよ)
《れい》 藤嶋先生の本読みました.中国に行ってしまいました.(わたしも誘われたのですが,NPO法人をつくって研究者を支援するという定年後にやりたいことがあったのでおことわりしました) ▼中国の研究は進んでいますか. ▲論文の数は多いです.それはまちがいありません.