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今日は2024年5月3日(金) 
■ 2024年5月2日・《763》きょうから冷房 0  0
逆二重励起光音響分光法(RDB-PAS)測定装置のBK1,BK2とBK3の3台を同時に運転しても,きのうまでは窓をあけるだけでなんとかなったが,きょうは,窓を全開でBK2だけを運転しても室温が30℃ちかくに.しかたなくエアコンの冷房運転を開始.ただ,エアコンの冷風が観葉植物を直撃するので,バルコニーをそうじして,ひるまはバルコニーにだしてやらないといけない.それにしても,おとといまでは,RDB-PASを運転しないときには暖房が必要だったのに...そういえば,かつての環境科学院の講義室はスチームの暖房で,それがきれる5月の連休あけは「さむかった」ことをおもいだした.
■ 2024年5月1日・《762》メーデー 0  0
きょうは「May day」なのだが,家人が遭難信号の「メーデー」と関係があるのかと.モールス信号でわかりやすいからそうなったのかなとこたえたものの自信はなくてググってみると,モールス信号でわかりやすいのは「SOS(トトトツーツーツートトト)」の方で,初期にはランプの点滅で通信していたが,無線通信となり,さらに無線通信が音声になったときに,フランス語の「m’aidez『誰か助けて』」からおぼえやすい「May day」になったと.
■ 2024年4月30日・《761》入用と出用[その2] 1  0
入用の「TC」と出用の「A」の両方があるのは,おそらく「A」の意味がちがうのかと,メーカーのウェブページから問合せをかけたら,きょう返事があって,「A」は出用の意味ではなく,2つある等級「A」と「B」のうちの「A」であることをしめすとのこと.JIS規格の抜粋もおくられてきて(イメージ右),それをみるとメスシリンダーにかぎらず等級をしめすことになっていた.よくよんでみると,出用と入用を表示するのは全量フラスコ(メスフラスコ)だけで,ほかの測容器はJIS規格でどちらが規定されているので必要ないのであった.それにしてもメスシリンダーが入用ということを教わった記憶がない.また,よく考えてみると,メスピペットは全量ピペット(ホールピペット)とちがって測定量が可変であるから「メス」で,メスシリンダーも同様と考えられるが,メスフラスコは一定量だからほんらいは「ホールフラスコ」のはずだが,まちがいのまま普及してしまい,それをJISで「全量フラスコ」にもどしたのだろうか.
■ 2024年4月28日・《759》入用と出用 1  0
...は測容器の規格で,「入用(にゅうよう)[受用(うけよう)ともいう/einguss・TC]」は測容器にいれて目盛線までいれたときの体積,「出用(でよう)/aufguss」は測容器にいれて目盛線までみたし,それを排出したときの体積をはかる.溶液調製につかうことがほとんどのメスフラスコ(現在は「全量フラスコ」というらしい)は入用(出用のものもあるらしい)で,ピペットは出用.メスシリンダーは溶媒をはかりとることが多かったので,てっきり出用かとおもっていたが,ほんらいの目的は「溶離液の分取」用らしく,JIS規格には「メスシリンダーはその目盛線が表す体積を受用として定められているものでなければならない」とあるとか(イメージ左).ただ,たまたまみつけたウェブサイトの写真(イメージ右)の(たぶん)メスシリンダーの写真には,「A」(出用)と「TC」(入用)のふたつの矛盾する表示が...「A」はべつの意味か.
■ 2024年4月27日・《758》光触媒基礎の基礎2024 1  0
光機能材料研究会のひとつの講演会である「光触媒基礎の基礎」は2014年より毎年開催.2019年までは,野坂芳雄教授(長岡技術科学大学[当時]/奇数年)と大谷文章(北海道大学[当時]/偶数年)が1年ごと交替の現地開催で,2020年からは大谷文章が毎年オンラインで講演.学会運営エンジンmeddle上での運用がはじまって2年めのことしは4月25日に開催.講演のながれは昨年とほぼおなじだが,今回は「パラダイム(paradigm)」を主題として,前半は現在の光触媒研究のパラダイム,後半は材料科学のパラダイムについて話した.画面共有はいつmのとおり「イマーシブシェア」で,アンケートには「投影されている先生の姿が理解を手助けしてくれました」と.講演する側がやりやすいだけではなかったことを聞いてうれしいかぎり.本日ウェブシステム最下段のイメージ写真を更新.
■ 2024年4月26日・《757》延期のくりかえし 2  0
2年ほどまえに,とある(インチキ)学会から講演依頼のメールがきて,いつもとおり「参加登録料なし/Plenary Talk/1参加者としての役割のみ」で引受けたのだが,当初は2023年4月26〜27日開催だったが,当日までなんの連絡もなく,ウェブサイトをみると2023年7月26〜27日になっていて,その日になってみると2024年3月14〜15日になっていた.自動的にスケジュールに表示されるので,ことしの4月になってからウェブサイトをのぞいたら,2024年4月26〜27日になっていた(イメージ左).これも延期だろうなとおもっていて,きょうみたら,案の定延期になっていた.参加登録料をあつめておいて,開催予定日に講演者のつごうがつかなくなったので延期したといえば返金しないですむという基本的な詐欺手法.
■ 2024年4月25日・《756》「実験の作法と安全」読了 1  0
中井浩二「実験の作法と安全」(吉岡書店/2013)読了.初版は2007年で,東京理科大学の物理実験の副指導書として書かれたもの.化学実験とはことなるが,基本的なところはおなじ.「実験をする時は必ず実験帳に記録を残す習慣が必要である(7ページ)」や「記録を写し取ることは禁物である(9ページ)」,「データを見るときは謙虚でなければならない.かつ,批判邸にデータを見る姿勢が望ましい(13ページ)」,「データを捨てるには捨てる理由を見つけなければならない」などなど.第II部の「体験的安全講義」もわかりやすい...が,「はじめに(1ページ)」の「厳しさの中にも実験は楽しく,面白くなければならない」とあるものの,「実験のなにがたのしいか」については書かれていない.やっぱり「touche」じゃないのかなぁ.
■ 2024年4月24日・《755》サクラ満開 4  0
NPOワークスペースと家内のカフェギャラリー「イルポスティーノ」がはいっているマンションの前の北四条通(通称「ミニ大通」)の緑地帯に一本のソメイヨシノがあって,ことしは先週末からさきはじめて,いまが満開.昨年は,4月20日に記事にしていて,「例年より早い」とあるので,ことしも早めか.いつもはすぐそばで見ているが,きょうはマンションの玄関よこのロビーから観賞.うしろのマンションが「屏風」のように見えた.きょうはまだ「さむい」くらいだが,あすからはすこし気温があがるそうで,ようやく春がきた感じ.
■ 2024年4月23日・《754》「辞書になった男」読了 3  0
佐々木健一「辞書になった男」(文藝春秋/2014)読了.ちなみに,購入した第2刷の発行は(2014年2月15日)で第1刷(2014年2月10日)のわずか5日後.当時は税抜き1,800円だったが,現在は3,274円).NHKのBSで「舟を編む(三浦しおん原作)」をみていて,寝室の本棚に「つん読」状態だったこの本を思いだして手にとった.書かれているふたりの「辞書になった男」のひとり,見坊豪紀(けんぼうひでとし)のなまえは,高校生のころに実家のトイレにならんでいたいろいろな出版社のPR誌のなかに「ことば」に関するコラムがあったので知っていたし,もうひとりの山田忠雄については赤瀬川原平「新解さんの謎」で有名な「新明解国語辞典」の編者として知っていた...が,その実像は想像をはるかにこえるものだった.とくに「新明解」の常識はずれの記述については(この本では明言はしていないが),「暮らしの手帳」の国語辞典の商品テストの指摘(170-176ページ=「暮らしの手帖事件」)に端を発しているのであった.ふたりとも「辞書の本質」をことなるアプローチで追求したといえる.
■ 2024年4月22日・《753》実験ノートは38冊め 4  0
きょうの4件のRDB-PAS測定で37冊めの実験ノート(bo-037)が終了し,38冊目の実験ノート(bo-038)を新調.現在使用しているのは「ナカバヤシLogical Air Notebook」で,33冊めから使用.さいしょはホーマック(現DCM)で購入していたが,現在はヨドバシカメラのネットショップ.ノートについている「科目シール」は36冊めまでは「理科」で,それ以降は「総合学習」に変更.NPOでの測定をはじめて3年めにはいって,記載方法もほぼ確立(イメージ右).測定開始時に「RDB-PAS測定」のまえの丸を赤くぬって,測定完了後は黒くぬりなおし,データ解析がおわったら,このマークを丸で囲む.測定後のホルダー内のサンプルを回収したら,こちらも丸で囲むことに.測定結果のデータファイルの内容ではわからない波長範囲以外の項目をファイル名にいれることにしている.ただ,換算係数のための感度チェックの値は実験ノートの記載をみるしかない...さて,どうするか.
■ 2024年4月21日・《752》ロンドン脱出 1  0
14年まえのいまごろ,グラスゴーでの学会に出席した最終日にアイスランドの火山が噴火し,すべての航空便がキャンセルととなり,夜行バスで脱出したロンドンで足止め中(21日でロンドン滞在6日め).上空の大気サンプル1 m3中に1つでも火山灰の粒があれば飛行禁止だったが,ルフトハンザ(たぶん)がテスト飛行をおこなって安全を確認し(パイロットは志願か...)て,21日から飛行再開...にはなったが,代替便の予約は電話しかなく,日本航空のロンドン支店にはまったく電話がつながらず,深夜に日本へ国際電話し,1〜2時間通話待ち...でもなんとかアムステルダム発便を確保.その後,そのアムステルダムへの便をなんとかとって帰国した.一連の記事は,「2010イギリス紀行あるいは脱出記」.
■ 2024年4月20日・《751》結晶面選択性 3  0
アナタース型酸化チタンでは,{111}面8つと{001}面2つが露出した十面体と[111]面8つが露出した八面体(実際にはそれぞれを主成分とするサンプル)を調製することができる.酸化チタンにかぎらず,十面体のような2種類の結晶面が露出した多面体形状粒子の光触媒活性がたかいのは,それぞれの面上で電子による還元と正孔に酸化が起こるからであるとする主張が多いが,その根拠は,助触媒を還元的あるいは酸化的に析出させることができるとするもの「だけ」である.そもそも,析出物の前駆体の吸着の面依存性や,析出したクラスターと表面の相互作用のちがいによっても説明可能(KBKNF2018)であることをしめしてきたが,面選択的電子移動説を否定するものではない.さいきん,共同研究をしているスウェーデンの研究者から,チタン酸ストロンチウムの表面電位のちがいについての論文がでているとの連絡.しかし,これでも覆らない...イメージ右は「KBKNF2018」のゼータ電位の結晶面依存性(推定でではあるが...).
■ 2024年4月19日・《750》二重励起光音響分光法 1  0
きょうの論文の「PAS2006」は,大阪大学から環境科学院の博士課程に入学してきた村上直也さん(現九州工業大学准教授)が,大谷研究室ではじめた二重励起光音響分光法(double-beam photoacoustic spectroscopy=DB-PAS)に関するはじめての文献.なにもないところから研究をはじめ,4本の論文を書いて学位を取得.現在電子トラップの総密度(total density of electron traps=TD)(当時は「欠陥密度」とよんでいた)をメチルビオロゲンをもちいる煩雑な化学滴定法ではなく,DB-PASによって定量できることをしめしたことによって,光触媒活性におよぼす各種構造因子の統計解析に関する論文(PRI2009FPR2010)につながり,そして結果的に逆二重励起光音響分光法(reversed double-beam photoacoustic spectroscopy=RDB-PAS)の開発にむすびついた.そしてRDB-PASにおける電子トラップ密度の絶対値に関する基本的な知見もこの論文のなかにある.
■ 2024年4月18日・《749》Chem. Commun. 2  0
コワルスカ教授(ポーランドヤギェウォ大学/大谷研究室もと准教授)から,Chem. Commun.60周年記念号(ChemComm 60th Anniversary Historic Papers from Japan and South Korea)に,「SPR2009」(E. Kowalska, R. Abe and B. Ohtani, Chem. Commun., 2009, 45, 241-243.)が掲載されたとの知らせ.この論文は,金担持酸化チタンの光触媒反応が,金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴(surface prasmon resonance=SPR)吸収によって開始されることを作用スペクトル解析によって明らかにした思い出ふかい論文.これまでで368回引用.じつは,掲載されている作用スペクトルは,単純なSPR吸収ではなく,おそらく高次の光強度依存性,つまり,2光子・2電子移動過程をふくむことを示唆しているが,反応速度がきわめておそいため,正確な測定がむずかしいため,それ以上の解析を断念したという経緯が.
■ 2024年4月17日・《748》異動 4  0
1996年4月に京都大学から北海道大学へ異動.「業務日誌」によれば,28年まえのきょうは,あいさつまわり.地球環境科学研究科(現環境科学院)の中村博教授,工学部の山?厳教授と触媒化学研究センターの岩本正和所長.環境科学研究科は現在の建物の建設中で,たしか中村教授は医学部附属病院内の空き部屋に仮住まい中.訪問したあと,病棟内で道にまよって霊安室のまえに出てしまった記憶あり.そのあと器具を発注し,配属された4年生にHPLC(液体クロマトグラフ)の講習(リン酸バッファ+メタノール溶媒)して,LocalTalk(その後AppleTalkに改称)を配線(プリンターをつかうにはこれが必須だったか).さいごに,財団の助成金のテンプレートを作成...とけっこういそがしい一日.
■ 2024年4月16日・《747》20年前のきょう 3  0
2004年4月16日は,「[講]分子環境学特論I(1030-1200/C104号室)第1回・[説]ユアサ吸着測定装置使用法説明会(1300)・小型キセノンランプ排気ダクト設置(オゾン臭防止)・第28回エレクトロオーガニックケミストリー(EOC)討論会(20040617-18)申込み・第23回光がかかわる触媒化学シンポジウム(2004/06/18)発表申込み」とある.環境科学研究科(現環境科学院)の新学期の最初の週は集中講義があるため,講義はたいがい第2週から開始だった.発表申込の2つの学術集会は現在はいずれも「学会運営エンジンmeddle」上.「光がかかわる触媒化学シンポジウム」は依頼講演で,タイトルは「光化学の立場から見た光触媒反応のしくみ」.このシンポジウムは触媒学会光触媒研究会主催なので,触媒化学研究者が多いことを意識したのか.
■ 2024年4月15日・《746》Journal of Applied Physics 1  0
Journal of Applied Physics(J. Appl. Phys.)誌には投稿したことはない(たぶん)のだが,定期的にメールがきてるのでこれまでは読みすてていた.今回のメールは「2024年から,J. Appl. Phys.(とPhysics of Plasmas)のすべての受理された論文は投稿料(掲載料)なしでオープンアクセス(AO)にする(ダイヤモンドOA)」との通知...とおもってよく読むと「2024年から」ではなく「2024年は」であったが,その理由は,大学や研究機関のうち,雑誌の購読料の一部をオープンアクセスのための費用負担をおこなうプログラム(subscribe to open=S2O)に参加する支援団体の数が一定数をこえたことによる.つまり,2024年はそうなったが,来年以降は,S2Oの参加がすくなければまたもと(article processing charge=AIPを徴収するゴールドOA)にもどるとのこと.S2Oについての解説はこちら
■ 2024年4月14日・《745》5 citations 1  0
毎日のように「あなたの論文が引用されました」という引用通知メールがくるが,先週とどいたのは「あなたの論文5つが引用されました」と.しかもさいきんの逆二重励起光音響分光法(RDB-PAS)測定による電子トラップのエネルギー分布関連の文献.よく見ると,名古屋大学の高島助教が著者のひとり.そういえば,責任著者(corresponding author)のCottineau氏(ストラスブール大学)からの酸化チタン試料のRDB-PAS測定をおこなって,結果についてオンラインミーティングでディスカッションしたおぼえが...
■ 2024年4月13日・《744》バンド構造あるいは「固体と表面の理論化学」 3  0
「固体と表面の理論化学」(1993/丸善)の著者であるロアルド=ホフマンは,福井謙一とともにノーベル化学賞を受賞した理論科学者で,一種の随筆あるいはメモのような内容で,ある程度は固体物理学の基本がわかっていないと理解することはむずかしい(だからほとんどわからない).たまたま手にとってめくってみたら,エネルギー(E(k)とkの関係が,ほんらいkが量子化されているために連続にならないはずが,実際には連続であるようにみえることが「バンド構造」であると(11ページ).そうか,これがもともとのバンド構造の意味か.伝導帯と価電子帯のような電子構造は「電子バンド構造(electronic band structure)」であるとWikipediaにも.ちなみに,この30年以上前に出版された「固体と表面の理論化学」はもちろんすでに絶版で,中古本は6万円以上の値ががついている.
■ 2024年4月12日・《743》比表面積 3  0
さいきんは「あなたが著者のひとりとなっている論文を引用する論文が出版されました」なるアラートメールが(たのんでもいないのに)とどくように.よく目にするのが,フレークボール形状タングステン酸ビスマス(Bi2WO6)の光触媒活性(反応速度)が比表面積に比例することを報告した「NGM2010」で,現在166回の引用.内容としては,薄片(プレート)が積層したフレークが集合した構造のBi2WO6の水熱合成時の温度をかえて,おなじフレークボール構造で比表面積がことなる粒子を調製し,その光触媒活性を比較したもの.「比表面積以外の構造がほぼおなじ」と仮定できるから,光触媒活性の比表面積依存性をしることができるわけで,「どんな場合でも」活性が比表面積に比例するとは述べていないのだが...たぶん誤解されている.《ちなみにこの論文は,天野助教(当時)から草稿をもらってから2か月たって修正版を返却している...》
■ 2024年4月11日・《742》指紋をこえて[3] 4  0
約50種類の市販(あるいは無料で入手可能な)チタニア(酸化チタン(IV))の電子トラップ密度のエネルギー分布(energy-resolved distribution of electron traps=ERDT)を測定し,ガウス曲線によるピーク分離処理がほぼ完了.独立したアモルファス[am],アナタースと接触したアモルファス[am/A],アナタース[A],ルチルと接触したアナタース[A/R],および,ルチル[R]の表面がことなるエネルギー位置にピークをもつと仮定すると,ピーク位置(エネルギー)をほぼ一定に固定して分離が可能.イメージは,比表面積が約50 m2 g-1以上で,XRDでアナタースのピークしかあらわれない,いわゆる「アナタースナノ粒子」だが,バルクも表面もアナタースのみというチタニアはこの5種をふくめて測定サンプルのなかにはなかった.これは,ERDTがもやは「指紋(fingerprint)」をこえて「DNA」のレベルとなっていることを示唆.
■ 2024年4月10日・《741》千年も空しからん 1  0
とは,新渡戸稲造「一日一言」のきょうのことば.「今日もきょうも徒(あだ)に過ぐして明日あすと 言はば千年(ちとせ)も空(むな)しからまし」と.そう,実際には,千年どころか百年も生きないわけだから,きょうを徒にするわけにはいかないが,といって焦ってもかえってむだになる可能性も.「きょうがさいごの日になるとおもって行動せよ」ともいわれるが,できることは限られている.「むだ」だったと思ったら,それの意味をかんがえることだろうか.イメージ左は現在入手可能なもの(Kindle版も!・「新訳」は英語からではなく文語調からの訳の意味)だが,もっているのは財団法人新渡戸基金が復刊したもの(イメージ中).イメージ右は,4月10日のことば(新渡戸記念館のFacebook).
■ 2024年4月9日・《740》「ですよねぇ」集団 4  0
人間社会というのは「集団」が基本.科学研究でも当然さまざまな集団が存在する.たとえば学会.会員としての研究者のあつまりという意味でも,学術集会という意味でも集団が存在していて,そこで提供されるものはその集団のメンバー(会員)だけが利用できる.メンバーになるということは,その集団の共通の理解,つまり「ですよねぇ」をうけいれること(これは,大学の教授会や部局長会議でもおなじ)だから,そこで議論されることは同質化され(クーンがいうところの「通常科学」)であり,そこに発展はない.コロナ禍で学術集会がオンラインになったとき,この原則が緩和されて,異分野の,そして,べつの「理解」を前提している場合でも参加できたため,「ですよねぇ」をみなおす機会があったのだが,それもほぼ消滅した.「ですよねぇ」集団はいずれ崩壊する.オンライン(あるいはコンカレント)開催は,参加者の多様性に対応できるだけではなかったのに...
■ 2024年4月8日・《739》スローフォトン 1  0
きょうの論文のひとつ「INVOP2021」は,チタニア(酸化チタン(IV))の逆オパールの各空孔のなかにひとつずつの金ナノ粒子をいれたものを光触媒としてつかうと,逆オパールのストップバンド(とじこめ波長域)の「すその」の光を照射したときに,有機化合物の酸化分解反応の活性が増大することを報告したもの.ストップバンドの「すその」では,光の進行速度が低下(slow photon)して吸収効率があがることが期待されるが,その結果として光反応の効率が増大することを実験的にしめすのは,比較にするものがないため困難だが,この研究では,空孔系がことなる逆オパールを調製して,ストップバンドの「すその」と照射波長があったときだけ増強されることをしめした...という(大谷教授以外はすべて女性研究者の)労作.《いつのまにか「Chemistry Letters」のウェブページがみやすくなっていたが,昨年のきょうもおなじ記事を掲載していたことが発覚!》
■ 2024年4月7日・《738》BK1 4  0
ワークスペースに4台(うち1台はモノクロメータの故障のため稼働なし)の逆二重励起光音響分光法(RDB-PAS)測定装置のうちの1台が「BK1」.この呼称は分光器のメーカーの略称(BK=分光計器/SP=Spectral Products)から勝手につけたものなので,論文などには記載していなかったが,あとになって「この論文の結果はどの装置をつかったのか」を知りたくなったときに,Experimentalの記述を検討しないとわからない,という不便があって,昨年あたりから,論文にも記述しておくことに.今回,スロベニアの研究者との共同研究の成果の論文を投稿したら,審査員から「装置の写真がほしい」とのリクエストがあって,それまでつくったことがなかった装置の説明写真を制作.
■ 2024年4月4日・《735》「科学者とは何か」読了(3) 2  1
そうか,クーンがいうところの「通常科学」には「オリジナリティー」という概念はふくまれない.村上陽一郎「科学者とは何か」(新潮新書/1994-2023)では,共同体として「専門家集団」という語句をあて,そこで共有されるパラダイムを「知識体(a body of knowledge)」(68ページ)とよんでいる.そこにもとめられるのは,「サムシング・ニュー(something new)」であり,新規性あるいはプライオリティともいえる.科学者の一種の責務としての成果報告の代表としての論文が雑誌に掲載されるかどうかは,このサムシング・ニューがあるかないかを審査員が判定することによってきまる.だから,論文が雑誌に掲載されるかどうかはオリジナリティーとはあまり関係がないのだが,いつのまにか,オリジナリティーがサムシング・ニューと同義となってしまっているのが現状か.
■ 2024年4月3日・《734》通常科学というパズル解き 2  0
その「共同体公認の知識体」こそがパラダイムであり,研究者は,そのパラダイムにもとづいて「通常科学」をおこなうというのが,クーンがいうところである(「新版 科学革命の構造」みすず書房/2023).そこには「革命」は存在しない.パラダイムから導かれるパズル,つまりこれまで説明できなかった現象を共同体(「学会」とおきかえてもいいかもしれない)のなかで公認されているパラダイムからえられる「ルール」にしたがって解き明かすことこそが研究活動ということになり,研究者のモチベーションはこの「パズル解き」の快感にほかならない.そこにはオリジナリティーという概念は存在せず,はじめてパズルを解いたというプライオリティのみがある.
■ 2024年4月2日・《733》ブレーキのない車 1  0
村上陽一郎「科学者とは何か」(新潮新書/1994-2023)は30年前に現在の科学界の状態を予言していたかのような記述がおおい.被引用数の重要性がますだろうという「読み」はただしかった.しかし,より本質的な問題として学会などの「科学者共同体」の内部倫理の問題に関する指摘は的を射たものであるが,現在だれが認識しているであろうか.その指摘とは,「科学者は(中略)常に,共同体内部の同業者にのみ目を向け,同業者の評価だけを求めて,自己完結的な営みを重ねているという点では,極めてユニークなカテゴリーに属すると考えられる.(中略)それは,『ブレーキのない車』という比喩さえ妥当のように思えてくる.(中略)その共同体公認の知識体を増加させることは無条件に善であり(後略)」(104〜105ページ).
■ 2024年4月1日・《732》クロニクルのカウンター表示の変更 3  0
在職中は定年退職の2022年3月31日がひとつの「くぎり」で,クロニクルのカウンタ−も「退職まであと何日」だった.想像もしなかったが,退職してNPO法人をたちあげてしまうと,「おわりの日」というのがない,つまり「くぎり」がないわけだから「生きているあいだ」ということになってしまう.それはちょっと...ということで,満80歳になる2036年11月30日までということに決定(といってもそれまで生きているかだどうかはわからないが...).あしたから,このクロニクルのカウンターはこの日までの「のこり日数」とすることに.あしたは「《4626》」になる予定.くわしくはこちら
■ 2024年4月1日・《732》学会運営エンジンmeddle売却交渉決裂 6  0
学会運営エンジンmeddleについて,某IT系民間企業からの買取提案.価格交渉は1,000万円からとのことだが,こちらの希望である「非営利の学術集会については実費のみとする」という条件で交渉難航.touche NPOとしては,条件をのんでもらえるなら買取価格をさげてもよいと提案したものの,先方は基本的に利用者によって価格をかえることはしないということなので,交渉決裂.こちらとしては,開発者がシステムを維持できなくなるまえ(あと10年くらいか...)にウェブシステムをなんとかしないといけないが,ほんらいの「担当者の負担軽減」という条件をまもりたいのでしかたないところ.交渉についての詳細はこちら
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